2024.07.02
作品ごとに変幻自在のキャラクターを演じて強い印象を残してきた名優ポール・ジアマッティ。
本作でついに初めてのアカデミー賞®主演男優賞ノミネートを果たした彼が、盟友アレクサンダー・ペイン監督や共演者、映画の魅力について語るインタビュー映像が解禁に!
映画本編内では、ジアマッティは斜視に見せるためのコンタクトレンズを着用しているが、コンタクトをはずした素顔の状態で、撮影合間にインタビューが行われた。
人生とワインの成熟を重ね合わせた人間賛歌『サイドウェイ』で作家志望の教師マイルスを演じたジアマッティにとって、それ以来約20年ぶりとなるペイン監督作出演だ。ジアマッティは、「監督との仕事を待ち望んでいた。『サイドウェイ』出演以後、あんな機会は二度とないのかもと思っていた。大好きな友人と仕事ができるなんて、最高だとしか言いようがない」と喜びをあらわにする。その上で、「監督は当時と比べて肉体、演技、感情についてディテールを見る目が鋭くなり、遊び心が増していたんだ。彼は、あらゆる面に精通していて、すべてに深い注意を払ってもいる。例えば、エキストラ含めて全員の名前を憶えてるんだよ!」と変化と驚きを語る。
ジアマッティが本作で演じる古代史の教師ハナムは、生真面目で融通が利かず生徒からも教師仲間からも嫌われているが、誰にも言えない過去を抱える複雑な人物。もちろんジアマッティを念頭に置いて作られたキャラクターだ。ジアマッティは、ハナムと自身の共通点について「アレクサンダーが私を選んだ理由のひとつは、役との間に共通点がたくさんあったからだろう」と語る。彼の父親はイェール大学で学長を務め、母親と祖父母も教師という特徴的な環境を持つが、「なじみのある世界が舞台だったから、はじめから世界観を理解できた。知っていてのことか分からないが、古代史にも興味がある。監督の計らいがあったのかな」と謙遜まじりに笑う。監督によると、ふたりはハナムというキャラクターについて何も話をしていないといい、「ポールは、”私にはこの人物のことがよく分かる。だから、任せてほしい”と言ってくれたんだ」とジアマッティから告げられたことを明かす。
ジアマッティにとって本作でうれしかったことの1つが、物語の中心を担う生徒アンガスを演じた新人ドミニク・セッサとの共演だという。キャスティングに難航を極めたアンガス役のオーディションでジアマッティはセッサの選考過程にも立ち合い、セリフの読み合わせなどでサポート。セッサに一切の映画出演経験のないことに一時は難色を示していたペイン監督に対して、彼がオーディションに参加できるよう提案したのは自分であると手柄をアピールするお茶目さも。
彼について、「舞台経験が少しある程度だったが、その時点でも十分な素質を持っていた。それでも彼の成長ぶりには驚かされたよ」と語る。続けて「もちろん最初のほうは、教師と生徒のように少し手助けする場面もあった。でも私の助けなんてすぐ必要なくなったよ」と振り返る。セッサは、ジアマッティとの共演を「特別レッスンのようだった」と振り返り、ジアマッティはセッサに助言をする代わりに自分の実体験などを共有し、俳優としての意識の持ちようを伝えようとしてくれたことを明かしている。
ベトナム戦争でひとり息子を亡くしたばかりで悲しみに暮れる料理長メアリーを演じ、アカデミー賞®助演女優賞に輝いたダヴァイン・ジョイ・ランドルフについて、ジアマッティは彼女との共演を楽しみにしていたという。「全てが期待以上だったし、発想が豊かで本当に面白い。ただ面白いだけでなく役の捉え方がすばらしく、メアリーに深みが出た。エネルギーにあふれ色鮮やかな才能を持つ、本当にすばらしい人」と演技のみならず存在感を高く評価。
バカンスや家族のもとに戻った人々を尻目に、まるで”置いてけぼり”になったように学校に取り残された3人が織りなす物語について、「予想もしなかったところで共通点を見つけ、彼らは関係を築くことになる。監督がこれまで手がけてきた作品同様、リアルな人間模様に安らぎを感じてほしい」などと紹介。インタビュー内、彼の言葉にある”自己犠牲”とは、誰によるどんな決断を指すのか……それは、ぜひ劇場で確かめてほしい。